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【研究ノート②】紙おむつ再生の技術 【研究ノート②】紙おむつ再生の技術

研究けんきゅうテーマ:かみおむつの構造こうぞうろう

図解:紙おむつの構造

まず、かみおむつが、どんな構造こうぞうをしているかをてみましょう。かみおむつは、のように何層なんそうにもなっています。からだれる表面ひょうめんは、はだざわりがよく、おしっこの水分すいぶんって後戻あともどりさせない「不織布ふしょくふ」とばれる素材そざいでできています。そのしたには「吸水紙きゅうすいし」があり、水分すいぶんめて内部ないぶおくりこみます。さらにそのしたには、「綿状めんじょうパルプ」につつまれた「高分子吸水材こうぶんしきゅうすいざいSAPサップ)」があり、ここで水分すいぶん吸収きゅうしゅうしてじこめます。その外側そとがわには「防水材ぼうすいざい」があり、吸収きゅうしゅうした水分すいぶんをもらさないよう、がっちりガードします。


このように、かみおむつは複雑ふくざつ素材そざいからできているので、リサイクルするには特別とくべつ技術ぎじゅつ必要ひつようです。

研究けんきゅうテーマ:オゾン処理しょりでパルプを再生さいせいする仕組しく

①オゾンってなに?

図解:オゾンってなに?

使用済しようずかみおむつからしたパルプは、オゾンで処理しょりします。オゾンとは、酸素原子さんそげんしOオー)が3つむすびついたもので、化学式かがくしきO₃オースリーです。わたしたちがよく酸素さんそO₂オーツー)は、酸素原子さんそげんし2つがつよむすびついて安定あんていした状態じょうたいたもっていますが、オゾンはとても不安定ふあんていです。そのため、安定あんていした酸素分子さんそぶんしO₂オーツー)にもどろうとする性質せいしつがあり、べつ物質ぶっしつつけると、酸素原子さんそげんしOオー)をひとつはなして相手あいてむすびつきます。このように、物質ぶっしつ酸素さんそむすびつくことを「酸化さんか」といいます。つまり、オゾンはべつ物質ぶっしつ酸化さんかさせるちからつよいのです。このつよ酸化作用さんかさようによって、オゾンは殺菌さっきん漂白ひょうはく脱臭だっしゅうおおきなちから発揮はっきします。

わたしたちを紫外線しがいせんから守るオゾンそう

オゾンは大気中たいきちゅうにもふくまれ、ほとんどは、地上ちじょうからやく10~50kmキロメートル成層圏せいそうけんあつまっています。これが「オゾンそう」とばれるものです。オゾンそうは、太陽たいようからそそ有害ゆうがい紫外線しがいせん吸収きゅうしゅうし、地球上ちきゅうじょう生命せいめいまも役割やくわりたしています。ところが、冷蔵庫れいぞうこやクーラーの冷媒れいばいやスプレーなどに使つかわれるフロンによって、オゾンそう破壊はかいされ、オゾンホールができていることがわかりました。そのため、現在げんざいはフロンの生産せいさん規制きせいされています。

②オゾンで殺菌さっきんする仕組しく

図解:オゾンで殺菌する仕組み

使用済しようずかみおむつには、大腸菌だいちょうきんなどの細菌さいきんがついています。洗浄せんじょうしても、まだ3ぶんの1くらいのこってしまいます。ここで活躍かつやくするのが、オゾンのつよ酸化作用さんかさようです。オゾンは細菌さいきんつけると、酸素原子さんそげんしOオー)をひとつはなして細胞膜さいぼうまくのタンパクしつむすびつきます。酸素原子さんそげんしOオー)とむすびついた(つまり酸化さんかした)タンパクしつべつ物質ぶっしつになるので、細胞膜さいぼうまく破壊はかいされ、細菌さいきんんでしまいます。グラフでしめしたように、オゾン処理しょりをしたあとのパルプは、細菌さいきんがほぼゼロ。衛生的えいせいてきなパルプにまれわります。

③オゾンで漂白ひょうはくする仕組しく

図解:オゾンで漂白する仕組み

新品しんぴんかみおむつがしろなのは、未使用みしようパルプの成分せいぶんであるセルロースがしろいからです。かみおむつを使つかうと、し尿にょうふくまれるタンパクしつなどの色素しきそのこり、ばんだりくろずんだりします。オゾンは、この色素しきそのもとになる物質ぶっしつ見逃みのがしません。ターゲットとなる物質ぶっしつつけると、酸素原子さんそげんしOオー)をひとつはなして酸化さんかさせます。すると色素しきそのもとがえ、セルロース本来ほんらいしろさをもどします。

④オゾンで脱臭だっしゅうする仕組しく

図解:オゾンで脱臭する仕組み

オゾンの脱臭だっしゅう仕組しくみも、酸化作用さんかさようによるものです。オゾンは、においのもとになる物質ぶっしつつけると、酸素原子さんそげんしOオー)をひとつはなしてターゲットを酸化さんかさせます。すると、におい物質ぶっしつべつ物質ぶっしつわるので、においもえてしまいます。


こうして殺菌さっきん漂白ひょうはく脱臭だっしゅうされたパルプは、もとの未使用みしようパルプとおな品質ひんしつもどします。


ではつぎに、かみおむつのもうひとつの大切たいせつ素材そざい高分子吸水材こうぶんしきゅうすいざいSAPサップ)の再生法さいせいほうてみましょう。

研究けんきゅうテーマ:高分子吸水材こうぶんしきゅうすいざいSAPサップ)を再生さいせいする仕組しく

高分子吸水材こうぶんしきゅうすいざいSAPサップ)ってなに?

かみおむつが水分すいぶんい、そとにもらさないのは、「高分子吸水材こうぶんしきゅうすいざいSAPサップ)」のはたらきによるものです。「高分子こうぶんし」というのは、とてもおおきい分子ぶんしのこと。SAPサップは「高吸水性こうきゅうすいせいポリマー」ともばれますが、「ポリマー」というのは、ちいさい分子ぶんし複数ふくすうつなげたもの。高分子こうぶんしもポリマーも、意味いみするところはおなじです。

*SAP:Super Absorbent Polymer

SAPサップ秘密ひみつさぐまえに、ポリマーとはどんなものかをっておきましょう。代表的だいひょうてきなポリマーといえば、プラスチック。SAPサップもプラスチックの仲間なかまで、人工的じんこうてきつくすことができます。SAPサップみず吸収きゅうしゅうする秘密ひみつは、ポリマーの構造こうぞうかくされています。

図解:ポリマーとはなんだろう?

SAPサップはとても複雑ふくざつなポリマーなので、それを理解りかいするまえに、単純たんじゅんなポリマーをてみましょう。たとえば、ごみぶくろ使つかわれるポリエチレンは、エチレンという化学物質かがくぶっしつがいくつもむすびついた構造こうぞうをしています。くさびのように、がっちりむすびつくのがポリマーの特徴とくちょうです。

図解:高分子吸水材(SAP)とはどんなものだろう

図解:SAP水分吸収の仕組み(単純化)

かみおむつに使つかわれるSAPサップは、ポリアクリルさんナトリウムというポリマーです。これは、アクリルさんとアクリルさんナトリウムがいくつもむすびついたものですが、ポリエチレンのように単純たんじゅんにつながっているわけではありません。「架橋性かきょうせいモノマー」という物質ぶっしつが、はしけるようにして、ところどころをつないでいるため、立体的りったいてきあみじょうになっています。SAPサップみずれると、あみひろがって、そのなかみずじこめます。これが、かみおむつの吸収力きゅうしゅうりょく正体しょうたいです。

②ユニ・チャームが実現じつげんしたSAPサップ再生技術さいせいぎじゅつ

ユニ・チャームは、パルプだけではなくSAPサップ再生さいせいにもんでいます。SAPサップ完全かんぜん再生さいせいするには、吸収きゅうしゅうした水分すいぶん完全かんぜんし、もう一度いちど吸収きゅうしゅうできる状態じょうたいもど必要ひつようがあります。

図解:高分子吸水材(SAP)が再生する仕組み

高分子吸水材こうぶんしきゅうすいざいSAPサップ)の吸水力きゅうすいりょくてみよう

これまでは、カルシウムを使つかってSAPサップから水分すいぶんのぞ方法ほうほうられていました。けれども、この方法ほうほうでは、カルシウムがのこって品質ひんしつちてしまうという問題点もんだいてんがありました。そこでユニ・チャームは、北海道大学ほっかいどうだいがく共同きょうどう研究けんきゅうかさねね、さん使つかって品質ひんしつそこなうことなくSAPサップから水分すいぶんすことに成功せいこうしました。パルプとおなじように、SAPサップにもオゾン処理しょりほどこすので、衛生面えいせいめんでも安心あんしんです。

図解:これまでの高分子吸水材(SAP)再生方法

図解:酸を使って高分子吸収材(SAP)から水を取り出す

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