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社長メッセージ

女性を基点に発想し、「共生社会」の実現に貢献する

代表取締役

社長執行役員

高原 豪久

ユニ・チャームの絶対価値「Love Your Possibilities」

 ユニ・チャームは、第12次中期経営計画の発表と併せてコーポレート・ブランド・エッセンス「Love Your Possibilities」を発信しました。この「Love Your Possibilities」には、全ての人が秘めている限りない可能性を信じ、その可能性を慈愛にあふれた利他の心で発揮することによって互いに支え合う「共生社会」の実現に貢献したいという当社の想いが込められています。

 このような想いを込めた「Love Your Possibilities」は、当社でなければ生み出すことができない、いわゆる絶対価値を象徴しています。具体的には、不快、不便、不衛生といった「不」の解消と、生きる喜びや楽しさといった「夢」の実現に貢献する価値です。

 これまで当社では、実際に商品やサービスを使用する生活者に、具体的なベネフィットを想起してもらうことを優先し、生理用品の『ソフィ』や、排泄ケア用品の『ライフリー』などカテゴリーごとのプロダクトブランドの強化を優先してきました。このような方針もあり、当社はグローバルで1,000億円を超える売上規模のメガブランドを複数育成することができました。

 しかし、「人生100年時代」と言われる現在、生活者は生涯においてさまざまな“顔”を持っており、その時々によって必要とする商品・サービスは多岐にわたります。このような一人の生活者の生涯をより豊かにするライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を最大にするような商品・サービスを提供することこそが、これからのユニ・チャームに求められているのだと思います。

 それに応えるためには、プロダクトブランドを有機的に連携させることが重要と判断し、「Love Your Possibilities」というコーポレート・ブランド・エッセンスを打ち出すことにしました。

第11次中期経営計画を振り返って~現場社員の成長が顕著に表れた3年間~

 第11次中期経営計画の最終年度である2023年度は、売上高8,880億円、コア営業利益率15.5%、ROE15.0%という目標値に対し、売上高は9,418億円と目標を上回ることができた一方で、コア営業利益率は13.6%、ROEは13.1%となりました。資源価格の高騰や不安定な為替の影響などもあり、非常に厳しい事業環境下ではありましたが、高付加価値商品を矢継ぎ早に投入し、特に市場成長余地の大きなフェミニンケア、ウェルネスケア、ペットケアに軸足を移したことなどが奏功し、大幅な売上拡大に成功しました。残念ながらコア営業利益率とROEは目標に届きませんでしたが、引き続き改善に取り組みます。

 このような短期的な財務面での成功はもとより、第11次中期経営計画の成果は最優先取り組み事項として掲げた人材育成が着実に前進したことにあると考えています。

 当社は「人材が競争力の源泉である」という考えの下、社員の成長を促す環境づくりと社員が活躍できる組織づくりに注力しており、これらを「共振の経営」と呼んでいます。第11次中期経営計画の人材育成において、従来と大きく異なる点は、重点戦略のプロジェクトリーダーを執行役員クラスから、実際に現場で汗をかいている部長・課長クラスに変更したことです。全社の事業部門、機能部門を横断して推進する重点戦略は、その難易度の高さもあり、これまでは執行役員クラスがリーダーを担っていました。従来の体制の方が安定感はあるのですが、より実効性の高いアイデアは現場を熟知した部長・課長クラスの方が豊富です。そこで、第11次中期経営計画では、部長・課長クラスをリーダーに抜擢し、さまざまな権限を与えました。これまでに担ったことのない重要な意思決定の連続で相当なプレッシャーだったと思います。このような、いわゆる“背伸び”をさせる経験と相まって、中堅層の人材育成が加速しました。

 なお、リーダーが成功・成長するよう適切な支援に努めることを執行役員クラスの責務とし、部門を超えた調整や必要な経営資源の確保など、部長・課長がリーダーシップを遺憾なく発揮できるような働きを“黒子”に徹して実践するよう執行役員に要請しました。幸いなことに自分たちの後輩である部長・課長らの成功・成長を我がことのように喜べる執行役員ばかりで、狙った以上の効果がありました。

 また、当社は社員一人ひとりが自分の意見を自分の言葉で発信する機会を大切にしています。当社では課やグループといった最小マネジメント単位を「SCRUM(スクラム)」と呼んでおり、毎週実施している週次スクラム作戦ミーティングでは、スクラムが抱える課題について、一人ひとりが率直に発言し、メンバー全員で意見の内容を吟味することで、よりよい活動計画へと修正します。このミーティングでの討議を充実させるために、議論のたたき台となる活動計画案はOODA-Loop Formという統一フォーマットで作成し、各欄に定型文で記載することで、課題の本質を明確にする工夫をしています。さらに、意図する事柄を共有しやすくすることを目的に「ユニ・チャーム語録」を編纂・配布し、各種の言葉の意味するところを定義づけすることで、認識の齟齬が発生しないようにしています。

 このような組織マネジメントの勘・コツ・急所を体系化した「共振の経営」を、全ての法人、事業部門、機能部門で社員全員が実践することによって、業績達成と人材育成を一元化した組織運営を実現しています。

価値は「顧客と共創」する

 以上のような第11次中期経営計画の成果・反省に基づいて、第12次中期経営計画の策定をするにあたり、「これからの価値創造はどうあるべきか」を深く考えました。

 当社は1961年の創業後、1963年に生理用ナプキン事業に参入して以来、不織布・吸収体の加工・成形技術において、世界トップクラスの研究・開発をし続けてきたと自負しています。しかし、冒頭で触れたように「人生100年時代」において、多様な“顔”を持つ生活者一人ひとりのニーズに対応するには、これまで以上に生活者自身が気づいていない価値を見つけ出すことが重要です。

NOLA&DOLA NOLA&DOLA

 生活者が自覚していない価値を発見するには、生活者が言葉にできないことを言語化する、いわば、代弁者(アドボカシー)になることが求められます。このアドボカシーを志向するにあたり、私は当社が提供している商品・サービスのカテゴリー特性を踏まえて女性に着目しました。もちろん個人差はありますが、多くの場合、女性と男性とでは体格や体力に差があります。このような状況を踏まえつつ何らかの社会課題解決を考える場合、女性基点で考えた方が、結果的に社会全体に歓迎される解決策を見出しやすいといったメリットがあることに気づいたのです。

 誰一人取り残さない「共生社会」の実現に貢献するような価値を提供するには、当然ですがユニバーサルデザインであるべきです。この“ユニバーサル”な商品・サービスを考える上で、女性の視点で物事をしっかりと見据え、これまで聞き逃していた小さな声を聴くための感度を高めることが何よりも大切です。そのような取り組みの先に、当社だからこそ生み出せる唯一無二の価値があると考えています。

 なお、ユニ・チャームの“ユニ”には“ユニーク” “ユニバーサル” “ユナイテッド”という3つの意味が込められています。

 世界的に女性の社会進出が進んでいることで、中間所得層世帯の割合が増加しています。この動きは、アジアはもちろん中東やアフリカへと広がっており、世界の消費トレンドは女性が生み出していると言っても過言ではありません。

 以上のような点を踏まえ、第12次中期経営計画は女性を基点に発想しました。「人生100年時代」におけるライフタイムバリューの最大化によって、市場シェアなど他との比較で生まれる相対価値の向上を目指しながら「共生社会」の実現に貢献することを基本方針とし、“Lady” “Life ” “Love”の3つの意味を込めて「Project-L」と名づけました。

 

世界中の国・地域で必要とされる企業を目指して

 ここで第12次中期経営計画における事業計画の概要について触れたいと思います。

 アフリカやインド、インド周辺国では、生理の対象年齢であるにもかかわらず、生理用ナプキンなどの専用品を使用せず布などで代用している女性が少なくありません。このような地域において、誰もが入手しやすい商品を開発し、いつでもどこでも買い求められるような流通チャネルを開拓することで、「生理用品といえばソフィ!」と答えていただけるようなレベルにまで『ソフィ』ブランドを浸透させるためのマーケティングを展開します。併せて、生理教育や女性の社会進出を後押しする活動を通じて、生理用品市場を急速に拡大していきます。また、人口構造が成熟しつつある日本や中国などでは独自性の高いショーツ型ナプキン、東南アジアでは清涼感のあるクールタイプナプキンなどの地域特性に合った商品を展開し、収益性を低下させることなく成長軌道に乗せる計画です。

 フェミニンケアの他には、高齢化の進展により需要の高まりが加速しているウェルネスケアと、都市部を中心としたペットの飼育頭数増加による市場拡大が見込まれるペットケアで成長を加速させる計画です。

 また、第11次中期経営計画期間中には、ユーザーとの新たな関係構築を進めるべくデジタルマーケティングに特化したMDX(Marketing by DX)本部を新設しました。第12次中期経営計画においては、生理用品からシームレスにベビーケア用品やペットケア用品、排泄ケア用品といった他カテゴリー商品の使用につながるような顧客体験を創出し、既存の商品・サービスだけでは接点のなかったユーザーと新たに長期的な関係性を構築することを目指しています。

 このような取り組みによって、生理から妊娠活動、妊娠期を経て育児やその先のライフステージへと、一人ひとりのユーザーとの生涯にわたる関係性を構築すべく、商品やサービスの多様化を加速させていきます。

 価値創造をグローバルで推し進めるには、演繹的な考え方で主体的に行動し、事業変革を強力に推進する人材、つまり「共振人材」を、質と量の双方で大幅に拡充しなければなりません。この課題の解決にあたっては、さまざまなバックグラウンドを有する多様な人たちに当社を選んでもらうことが最も重要です。そのためには、そういった人材が活躍できる環境整備に努め、遅滞なく人材戦略を推し進める必要があると考えています。

 これらの事業計画を実行することにより、第12次中期経営計画の最終年度である2026年度の目標を、売上高1兆1,500億円、コア営業利益率15.8%、ROE15.0%としました。

行動変容を促す仕組みを通じて意識を変える

 当社の価値創造にとって、社員が成長する環境づくりと、社員を活かす組織運営は永遠のテーマです。当社が推進する「共振の経営」で最も重要なのは、社員一人ひとりが主役となることです。

 どれほど優れたマネジメントモデルがあったとしても、実践されなければ成果は生まれません。そして真剣に実践することを社員に期待するのであれば、やはり深い理解や納得、さらには共感のレベルにまで社員に経営陣の想いを理解してもらうことが大切です。

 当社では毎週初日の日本時間の13時から1時間、世界中の部長以上が集まって「共振の経営実践会議」を開いています。この会議では全社課題を参加者全員で討議し、解決策を抽出するのですが、その冒頭に私をはじめとする取締役や執行役員が持ち回りでスピーチをします。中期経営計画や単年度目標の進捗状況といった、短期課題から中長期的な施策まで多岐にわたるスピーチを行いますが、登壇者である役員は自分の言葉でグループ社員約1万6千名に熱く語りかけます。

 その内容は各国・地域の言葉に翻訳され、週次スクラム作戦ミーティングでも「あの内容は参考になった」「今ひとつピンとこなかった」というように意見を交換したり、リーダーから「あれは、こういう意味だよ」と解説を受けたりと、当社の目指すべき方向性について、社員一人ひとりが深く考える機会につながっています。ポイントは、言いっぱなしで終わらせないことです。必ず具体的な行動を約束し、その行動を実際にしたのか、しなかったのか、行動した結果、その成果はどうだったのかを翌週のミーティングで確認します。このように、まず具体的な行動変容を促す仕組みを整え、これを通じて意識を変えていくことを当社は重視しています。

 当社では、社員一人ひとりが絶対価値の追求を主体的に行えるよう、日々の業務内容にまで目標を落とし込んでいます。まずは、行動を起こし、前向きに取り組む姿勢を評価することが、自分の仕事や組織に対する意識の変化を生むことで誇りを持つことにつながり、さらなる努力の源泉となるのです。社員の主体的な行動が生み出す意識の変化と組織のパワーを融合させれば、新たな発想でこれまで存在しなかったような画期的な価値を生み出せると私は確信しています。このような取り組みによって絶対価値の向上に努め、「共生社会」の実現に貢献します。

2024年6月

ユニ・チャーム株式会社

代表取締役 社長執行役員

高原 豪久

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