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社長メッセージ

ユニ・チャームが創る、未来の「共生社会」

代表取締役

社長執行役員

高原 豪久

「共生社会」=Social Inclusion

私が強く願う世界の未来像は、「共生社会」です。イメージするのは、世界中の人々が誰ひとり取り残されることなく、平等で、お互いにその人らしさを尊重しながら支え合い、共存できる社会です。ユニ・チャームがさらなる成長と発展を続けていくためには、未来に向けて創り出す全ての商品やサービスが「共生社会」の実現に寄与するものでなければならないという揺るぎない想いが私にはあります。

こうした想いを持つ私は、2015年の国連サミットにおいて193の加盟国の全会一致で採択された、国際社会共通の目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」に強く共感しました。この共感から始まり、2020年には当社のパーパスを「SDGsの達成に貢献する」ことと明確に定め、さらにミッション、ビジョン、バリューに分解、一人ひとりが何を目指し、何を実践すべきかを具体化し、全社員に共有しました。

その中でミッションとして掲げたのが、先述した「共生社会」の実現です。当社が目指す「共生社会」とは、Social Inclusion(ソーシャルインクルージョン)、つまり、いわゆる生活弱者に加え、加齢や疾病、出産、生理などにより一時的または一定期間、不利を抱える状況にある人たちまでを視野に、どのような状況においてもその人らしい生活が送れるよう、一人ひとりが自立し程よい距離感でお互いを支え合う社会です。ミッションを明文化してから2年以上が経過し、現在は全社員が「共生社会」の実現を目指して日々活動しています。

社会の期待に応えるために、ユニ・チャームが進むべき道

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックから3年目となる2022年、いまだ世界各地で人々の苦しみは続いています。未曽有のパンデミックを乗り越えるために、私たちは、国境や言葉、文化の壁などさまざまな境界を越え、お互いに助け合っていかねばなりません。「全ての人が自立し、互いに助け合い、自分らしく生きていける」社会を人々は求めており、その実現のために企業ができることはたくさんあります。当社のように世界中で事業を展開する企業は、国益に縛られることなく、「利他の心」に基づいて活動を行える立場にあると私は思います。世界中で事業を行うことにより、多くの人々の期待に応えられるという点で、私は改めて当社の可能性を感じています。

当社が事業を通じて社会の期待に応えるには、商品やサービスが世界中の消費者に選ばれる必要があります。この必要性を社内で共有するため、私たちは「2030年に世界一の企業になる」という目標を掲げています。

世界一の基準は何か。進出市場において多くの商品カテゴリーでトップシェアを獲得することはひとつの指標であり、今後も継続して商品やサービスの差別化を図っていきます。ただし、市場シェアはあくまで比較でしか生まれない相対価値に過ぎないと私は考えています。本当の意味で世界一となるには、当社にしか生み出せない絶対価値を明確にする必要があります。当社の絶対価値は、ビジョンである「NOLA & DOLA」を実践し、社会全体の「不」を解消した上で豊かさを生み出し、「共生社会」の実現につなげること、すなわち、事業を通じて人々の暮らしの質を上げていくことです。当社にしか生み出せない絶対価値を創出し続けることで世界一に近づいていくのです。

「共振の経営」で唯一無二の人と組織を育てる

「2030年に世界一の企業になる」というグループ共通の目標に向けて社員のベクトルや足並みを揃えるために、当社では「共振の経営」という独自のマネジメントモデルを推進しています。これは、経営方針や戦略など経営陣の視点と、現場の最前線で働く社員の知恵といった双方の視点や考え方を、お互いが密にコミュニケーションを取り、学び合うことによって、全社共通の目標に向けた一人ひとりの主体的な行動を生み出す仕組みです。経営陣の視点と現場の社員の力が振り子のような共振を呼び、お互いの成長、そしてグループ全体の成長につながることが私の理想です。

「共振の経営」を推進する上で重要なことは、当社の全ての活動において、社員の主体性が基点となっていることです。人は何かをやろうとするとき、その理由や気持ちに共感できなければなかなか行動に移せず、たとえ行動したとしても本気を出せないと私は思います。グループ全体で掲げる目標に対して全社員の共感を得られれば、一人ひとりが自ら行動するようになります。そして、その力は徐々に結集し、ユニ・チャームという組織全体の力になっていきます。ただ、「共感は待っていても生まれない、共振の先に共感がある」と私は考えます。「共振の経営」とはつまり、全社員の自発的な行動につながる「共感」を生み出すために、まずは社員の多様性を活かそうという積極的な働きかけなのです。

世界各地に拠点と社員を擁する当社にとって、それぞれの国や地域特有の文化や価値観、働き方をまずは受け入れることで共振し、共感につなげていくことが大切だと思っています。同時に私は、当社の社員には相互に多様性を認め合うと同時に、個々の意志やアイデンティティは強く持ち続けてほしいと思っています。そうすることで一人ひとりの個性が際立ち、唯一無二の人と組織になり得るからです。

2021年の環境変化を受けて、ユニ・チャームが起こすアクション

COVID-19のパンデミックを境に、世界中で消費に関わる意識や行動が一変しました。リモートワークの普及や多人数での集会、会食の機会の減少をきっかけに在宅時間が増え、育児や介護、パートナー・アニマル(ペット)との向き合い方をはじめとするさまざまな意識に変化が見られます。

ひとりの時間が増えたことが、自分の内面と向き合う機会の増加につながり、例えば「より安全で安心なもの、より自分のニーズに正しく合致したものを選ぶ」といった、商品やサービスの価値の本質を基準として選択する傾向が社会全体で高まっています。特に1990年代後半から2000年代に生まれたZ世代は、自然環境問題や社会課題に高い関心を持ち、自分の価値観を投影できる商品やサービスを選ぶ傾向があります。また、人気のYouTuberやインスタグラマーなどが発信する情報を基に商品を選ぶ「インフルエンサー消費」が加速し、市場のパーソナライズ化が進んでいます。パーソナライズ化とは、不特定多数に向けた量産型のマス市場と異なり、消費者個々の多様な嗜好を満たす商品を求める傾向のことです。こうした「自分向け」の商品を選ぶ傾向は、単身世帯に限らず、同居する家族内でも一人ひとりのこだわりを反映した多様な商品を求めるようになってきていることにも現れています。

当社では、こうした消費者の変化を素早く察知し、従来の定番商品に加え、これまでにない新たな価値を付加し、人々の暮らしの質の向上に寄与する商品・サービスを強化しています。従来品に比べ、一定以上のプレミアムを実感できる商品を継続的に開発することで差別化を図り、市場全体に対してより高い価値を創造していきます。

消費者意識の変化に加え、ベビーケアやフェミニンケア市場では、世界的に対象世代の人口減少が予測されています。人口減少に伴うマーケットの縮小には、商品のプレミアム化とライフタイムバリュー(顧客生涯価値)の最大化の合わせ技で対抗していきます。当社は、乳幼児、若年層、中年層、高齢者層といった、ライフステージに応じた商品やサービスを提供しており、ライフステージの変化とともに、さまざまなコンタクトポイントで新しい「習慣」や「常識」を提案することで、消費者から選ばれ続けることを目指しています。付加価値を高め、プレミアム化を図った商品・サービスの展開を進め、消費者が当社の商品・サービスを選ぶ際の動機づけとすると同時に、消費者1人当たりの長期にわたる高い収益性の確保につなげていきます。

COVID-19のパンデミックを契機としたもうひとつの大きな変化は、デジタル技術の普及が加速したことです。国や企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、世界中でデジタル技術の実装が進んだことで、消費者ニーズの見極めにかかるリードタイムが大幅に短縮されました。また、世界各地でモノづくりのスマート化が進み、効率的な生産体制が着々と整備されています。当社では、DX推進の目的を、消費者本人ですら自覚していない潜在的な欲求であるインサイトを探る手段として考えており、最終的には新商品の開発やリニューアルのポイントの見極め、そして新規カテゴリーの創造につなげることと位置づけています。

2019年には、当社初のスマートファクトリーである九州工場が操業を開始し、産業用ロボットの導入やセンサー検知で稼働率低下の要因を発見するシステムなど、デジタル技術を駆使して生産工程の徹底した効率化を図っています。消費者の購買行動が多様化していることからも、多品種少量生産をローコストで行うことが、これからのモノづくりの鍵となります。DX推進を加速させ、より一層生産の効率化を進めていきます。

2021年には、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの構築を加速させるべく、DX推進本部を新設しました。消費者の生活や商品の使用実態の把握を目的とした、一般家庭への訪問調査をオンライン上で行い、映像や音声情報を収集できるデジタルスクラムシステムや、保育園が保管している紙おむつの残り枚数をデータで管理し、在庫が減少すると自動発注するシステム、さらには近隣の保育園への紙おむつの納品日を自動で調整し、効率的な配送ルートを導き出すシステムを開発しました。後者2つのシステムは、紙おむつのサブスクリプションモデル「手ぶら登園」として事業化しており、2022年2月時点で全国1,700以上の保育施設が導入しています。当社は、今後もDX推進を加速させ、消費者インサイトの発掘をイノベーションの創出、そして、革新的なビジネスモデルの構築につなげていきます。そうすることで、「NOLA & DOLA」の実践をより効果的・効率的に行うことができ、「共生社会」の実現可能性が高まると考えています。

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ユニ・チャームの商品やサービスが多くの消費者に選ばれるために

今後、先述の環境変化を踏まえたアクションを起こし、市場で勝ち残るには、当社独自の強みと競争優位となり得る要素を的確に捉え、差別化を図らなければなりません。

当社の強みとして一番分かりやすいものは、不織布・吸収体分野に特化した高い技術力です。不織布・吸収体に特化した研究、加工・成形技術の開発と改良を徹底的に行い、人々の不快をなくし快適を提供するために、その技術を活用してきました。これらを高付加価値な商品の開発につなげる力は、60年近くこの市場をリードしてきた当社の誇りでもあります。

また、赤ちゃんや高齢者、パートナー・アニマル(ペット)など、ユーザー本人の要望を直接聞くことが難しい商品を扱っていることから、商品開発の際、言語化されないニーズを的確につかむことを重視しています。既成概念にとらわれない鋭い観察眼を持ち、生活や消費の実態の奥深くに隠れている人々のニーズの本質を追究し、得られた新たな着眼点を基にイノベーションにつなげていく力は、「当社ならでは」と言えます。鋭い観察眼に基づく緻密なマーケティングや、これに応える商品開発・生産技術分野におけるフロンティア精神は、当社のビジョンである「NOLA & DOLA」の浸透と徹底した実践によって生み出されるものであり、当社でしか生まれ得ない力だと思っています。

さらに、この2つの強みを下支えする力として、当社が優れている点は、実行力の高さです。「共振の経営」は、社員の自発的な行動を促すためのマネジメントモデルであることは先述しましたが、全社員が実行力を発揮できるような働きかけを行っています。「共振の経営」によって培われた社員の実行力の高さは当社の成長には欠かせません。

当社が持つ強みのうち、これらの3つを競争優位性としてより一層強化し、多くの消費者に選ばれる価値の創出につなげていきます。

成長を加速させる「Kyo-sei Life Vision 2030」と第11次中期経営計画

「共生社会」の実現を目指し、当社が成長していくための道筋を設定し、社員の行動の方向性を明確にするために、ESGの側面から中長期的な目標を定めた「Kyo-sei Life Vision 2030~For a Diverse, Inclusive, and Sustainable World~」(以下、「Kyo-sei Life Vision 2030」)と、財務的な側面から中期的な戦略を策定した第11次中期経営計画の2つの大きな経営方針を、グループ全体で着実に実行しています。

「Kyo-sei Life Vision 2030」は、「私たちの健康を守る・支える」「社会の健康を守る・支える」「地球の健康を守る・支える」の3つに、「ユニ・チャームプリンシプル」を加えた4つのパートで構成されており、それぞれに5つ、合計20の重要取り組みテーマ・指標・目標を設定しています。実行初年度である2021年度を振り返り、「Kyo-sei Life Vision 2030」で掲げた「私たち」「社会」「地球」の「健康を守る・支える」取り組みの重要性を認識しています。

まず「私たちの健康を守る・支える」を推進する上で、これまで当社が積極的に市場開拓をリードしてきた日本やアジアにおいて、出生率の低下に伴い人口の減少が顕著となっています。そのため「健康寿命延伸/QOL向上」に資するウェルネスケア事業や、パートナー・アニマル(ペット)ケア事業を通じて「パートナー・アニマル(ペット)との共生」に取り組むことが成長性と収益面の双方で重要です。さらには、これから人口の増加が見込まれるアフリカなど、未進出の市場の開拓を積極的に進め、「育児生活の向上」「衛生環境の向上」「性別や性的指向等により活躍が制限されない社会への貢献」を実現しつつ、さらなる成長を目指します。

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また「社会の健康を守る・支える」を推進する上で、市場のパーソナライズ化に伴い、これまで以上に細分化された市場に合わせて商品やサービスをカスタマイズした上で、より一層進化させていく必要があります。消費者の購買動機が「自分らしさや自分らしく過ごせる社会の実現につながるから」という商品の本質の追求にシフトする中で、これまで以上に高付加価値な商品を開発しなければ、将来的に当社の商品が消費者に選ばれなくなる可能性があるからです。当社の強みである鋭い観察眼に基づく緻密なマーケティングとデジタル技術の掛け合わせにより、消費者インサイトの効率的な発掘が可能となります。積極的なデジタル技術の活用は、より高度な「NOLA & DOLA」の実践につながる唯一無二の商品やサービスを生み出し、「共生社会」の実現に寄与すると確信しています。

そして「地球の健康を守る・支える」を掲げているように、環境問題の解決に向けた積極的な行動なくして、企業の成長はあり得ないと私は考えています。衛生用品という、使い捨てであることに意義のある商品を扱う企業として、サーキュラーエコノミーの実現に向け、使用済み紙おむつリサイクルプロジェクトを自治体や他社と連携して進め、水平リサイクルシステムの事業化に向けた実証実験を行っています。将来的には、紙おむつの原料は新たな森林資源を使用せず、使用済み紙おむつからリサイクルされた再生資材だけとなることが理想です。そうすることで、自然との共生と「使い捨て」という究極の衛生管理の両立が実現できるのです。

このように「Kyo-sei Life Vision 2030」は、20の重要取り組みテーマ・指標・目標によって、社員一人ひとりが具体的にどのように行動すべきかを明確にしています。グループ全体で着実に取り組みを進め、ESGへの対応を強化すると同時に当社の成長を加速させています。

第11次中期経営計画は2022年度で2年目となり、策定した5つの基本戦略は、それぞれの担当役員・幹部が戦略の遂行を率いています。1年目の2021年度は戦略を着実に遂行した結果、厳しい事業環境下ではありましたが、増収増益を達成することができました。具体的には、売上高は552億円(7.6%)増収の7,827億円、コア営業利益は77億円(6.7%)増益の1,225億円となりました。なお、第11次中期経営計画では、2023年度の連結売上高8,880億円、期間中の売上高CAGR (年平均成長率)6.9%、コア営業利益率15.5%、ROE15.0%という財務目標を掲げ、これを達成するべくグループを挙げて全力で取り組んでいます。当社の中期経営計画は3年ごとに発信していますが、1年ごとに現状分析や環境変化の予測を行い、常に3年先を見据えて変化を先取りする「ローリング計画方式」を取っています。「共生社会」の実現という最終目的地は変わらずとも、状況変化をいち早く察知し、常に最良のルートを選ぶイメージです。重点戦略を毎年見直し、変化に対応することで、確実な目標達成につなげています。

持続的な成長に向けて

当社の中長期的な成長の実現には、パーパスを起点とした戦略の策定が欠かせません。今後も、直接的に「SDGsの達成に貢献する」戦略を策定し、当社の商品・サービスの購入や使用が自然環境問題や社会課題の解決につながると消費者が実感できる価値を創出し、そのような価値の多寡が消費者の購買動機となるような意識変革を起こしていきます。「共生社会」の実現に近づくためにも、社会課題の解決そのものをユニ・チャームの成長ドライバーとするべく尽力していきます。

2022年6月

ユニ・チャーム株式会社

代表取締役 社長執行役員

高原 豪久

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