社長メッセージ
ユニ・チャームの全社員が自身の可能性を信じ、「共振の経営」の実践を通じてそれぞれの能力を遺憾なく発揮することで世界一を必ず達成します
コーポレート・ブランド・エッセンス「Love Your Possibilities」
代表取締役
社長執行役員
高原 豪久
ユニ・チャームは、「相対価値でも絶対価値でも2030年までに世界一」を目標としています。ここで用いた「相対価値」とは数値で比較可能な価値で、売上高1.5兆円やコア営業利益率17%、ROE17%、不織布・吸収体事業で世界シェアNo.1などを指します。対して「絶対価値」とは、当社にしか生み出すことのできない独自性の高い価値を表し、「ユニ・チャームの商品やサービスのない暮らしなんて想像できない」と消費者に言っていただけるレベルを目指しています。なお、「相対価値」は「絶対価値」の結果に過ぎず、当社が追求すべきは「絶対価値」だと考えています。
この「絶対価値」を社内外のステークホルダーと広く共有すべく、コーポレート・ブランド・エッセンス「Love Your Possibilities~なんでもできそう。いつでも、いつまでも。~」を2024年2月に公表しました。この「Love Your Possibilities」には、すべての“人(Your)”が秘めている限りない“可能性(Possibilities)”を信じ、その可能性を“慈愛(Love)”にあふれた利他の心で発揮することで、互いに支え合う「共生社会」の実現にユニ・チャームは貢献したいという想いが込められています。
「Project-L」のスタートを振り返る
2024年度から2026年度を対象期間とした第12次中期経営計画「Project-L」は、女性を基点に発想することで「共生社会」の実現に寄与する「絶対価値」を創出し、世界中のあらゆる生活者とペットのライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を最大化することで、当社の「相対価値」を拡大することを基本方針としています。
初年度である2024年度は、売上高は5%増収の9,890億円、コア営業利益は8.2%増益の1,385億円となり、売上高、コア営業利益ともに過去最高を更新しました。
日本では当社商品が提供する価値に見合う適正な価格が浸透したことに加え、小売店頭での露出拡大や販売促進の強化、ウェルネスケアおよびペットケアカテゴリーの伸長により増収増益を達成しました。また、インドではベビー用紙おむつが2024年12月時点の市場シェアNo.1を獲得し、フェミニンケアも黒字化が定着、中国や東南アジアでは現地ニーズに合わせた独自性の高い商品展開や、伸長が著しいECチャネルでのプロモーション強化により順調に業績を改善しています。またウェルネスケアやペットケアといった新規参入カテゴリーでも着実に橋頭堡を築きつつあります。中東では現地の生活に根ざしたオリーブオイル配合商品などの浸透が進み、北米やブラジルにおいても着実に収益性を改善しています。
2025年度以降もウェルネスケアやフェミニンケア、ベビーケア、ウェットティッシュなどのパーソナルケア事業では、対象人口の増加や経済成長により市場拡大が見込まれるインドおよび周辺国、アフリカなどが重点地域となり、現地の消費者ニーズを捉えた「絶対価値」を追求した商品展開を戦略的に進める予定です。また、ペットケア事業は、市場規模が大きい米国での成長継続を見込んでおり、中国や東南アジアでの積極的な事業拡大を進める予定です。
ユニ・チャーム独自のサーキュラーエコノミー
ここで、2024年度の成果をいくつか紹介したいと思います。まず、サステナビリティに関する取り組みについて、当社では2016年度より使用済み紙パンツ(紙おむつ)のリサイクルプロジェクト「RefF(リーフ)」を推進しています。RefFプロジェクトでは、使用済み紙パンツを洗浄・分離し、滅菌処理にオゾンを使用することで、新品同様の衛生的なパルプへと再生する当社独自のリサイクルシステムを確立しました。また、リサイクル過程で分離した高分子吸水材やプラスチックを再生することにも成功しました。これらの社会実装の一環で、2022年6月には九州地区の病院や介護施設でリサイクルパルプを使用した大人用紙パンツ『ライフリー 横モレ安心テープ止めRefF Mサイズ』のテスト使用を開始しました。その後も商品ラインアップや販売地域を拡大し、2024年4月には一般流通向けのベビー用紙おむつ『マミーポコパンツRefF』と、猫のシステムトイレ用シート『デオトイレ 消臭・抗菌シートRefF』を発売しました。2025年3月には、使用済み紙パンツからリサイクルされた高分子吸水材を使用した、猫のトイレ用紙砂®『デオサンド 香りで消臭する紙砂®RefF』を発売するなどリサイクル素材を使用した商品展開を加速しています。
また、当社はBABY JOB株式会社と協働で、保育施設向けに紙おむつ・おしりふき定額サービス『手ぶら登園®』を展開しており、2024年12月末時点で全国5,230ヵ所以上の保育施設が導入しています。このサービスは、保護者の負担軽減と保育士の業務効率改善に貢献するもので、2023年4月からは鹿児島県志布志市のサービス利用保育施設で使用済み紙おむつの回収を始めました。2024年8月には回収した紙パンツのリサイクルパルプを使用した保育施設専用の紙おむつ『マミーポコパンツRefF』の提供を開始しました。これにより「使用~回収~リサイクル」がつながり、当社独自のサーキュラーエコノミーを実現しました。将来的には、『手ぶら登園®』を導入するすべての保育施設から使用済み紙おむつを回収し、リサイクルの輪を広げることを目指しています。
なお、使用済み紙パンツのリサイクルプラントは2024年末時点で鹿児島県志布志市と大崎町の2つの自治体で運用されていますが、2030年までに国内外10以上の自治体への導入を目指しています。将来的には当社独自のサーキュラーエコノミーをグローバルに展開することを目標にしています。
ライフタイムバリューを最大化するデジタルプラットフォーム
続いてデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みをご紹介します。ユニ・チャームのDXは、これまでは見過ごされてきた消費者インサイトを、デジタル技術を活用することで深く分析し、消費者自身も気づいていなかったニーズの本質を探り出し、そのニーズに応える商品・サービスを生み出すことを目指しています。このような観点から、「Marketing by DX(MDX)」を体現するMDX本部を2023年7月に設立し、さまざまな取り組みに着手しました。その成果のひとつに、2024年度にリリースした生理・体調管理アプリ『ソフィBe』が挙げられます。『ソフィBe』は、従来の生理日管理アプリの枠を超え、ホルモンに着目した点が大きな特長です。生理周期の管理はもちろん、心身の変化とホルモンの関係をグラフで可視化することで、体調変化を手軽に理解することができる設計となっています。また、AIチャット機能を搭載することで、「心身の不調を相談できる相手がいない」という女性の悩みに寄り添います。
『ソフィBe』を通じて、生理から妊娠活動*(妊活)そして出産・育児、さらには更年期や介護、ペットケアまで、女性のライフステージを広くサポートすることを目指しています。一例として、2023年度に発売した『ソフィ 妊活タイミングをチェックできるおりものシート』と『ソフィBe』を連携させることによって妊活をサポートするサービスを開始しました。また、『ソフィBe』に蓄積された膨大なデータを新商品・新サービスの開発に活用することで、生活者が日々の暮らしで遭遇する感情の起伏や体調不良の要因を分析し、一人ひとりの悩みを解決するためにパーソナライズされた商品・サービスの提供へとつなげることを目指しています。長年にわたり生理ケア用品で女性の悩みに寄り添い続けた当社ならではのDX推進によってライフタイムバリューの最大化に貢献したいと考えています。
* 妊娠についての知識を身につけることや、家族などとの話し合い、妊娠にあたって自分の身体の状況把握、医療による不妊治療をすることなどといった一連の活動のこと。
「共振の経営」の浸透
『RefF』や『手ぶら登園®』『ソフィBe』は「Love Your Possibilities」を具現化する商品・サービスの一例に過ぎませんが、このような活動をグループ全体で加速する上で、当社独自のマネジメントモデル「共振の経営」の浸透は欠かせません。「共振の経営」の本質は、経営陣と現場の社員の双方向コミュニケーションです。経営方針や戦略などの経営陣の視点と、現場の最前線で働く社員の知恵を互いに理解し合うことによって、全社目標に対する深い理解を促し、一人ひとりの主体的な行動へとつなげます。経営陣と社員の双方向コミュニケーションが振り子のように組織全体へと波及することで大きなうねりを生み、一人ひとりが成長することによってユニ・チャームの事業成長へとつなげることを目指しています。
このようなグループ全体で統一したマネジメントモデルを浸透・運用することにこだわるのには理由があります。当社は約80の国・地域で事業を展開する中で、約1万6千名の社員がその事業活動を担っており、それぞれが多種多様な文化・価値観を有しています。この多様性にあふれる社員の足並みを揃える上で「共振の経営」という統一したマネジメントモデルは有効性を発揮します。「共振の経営」をさらに強化すべく、2022年度より、「Global OODA Caravan」を開始しました。これは、私が世界各地の事業拠点を訪問し、現場最前線の社員と膝を突き合わせて本音の対話を行う施策です。これまでの実施回数は18回で、延べ700名以上の社員と直接対話を行いました。
「Unique」「Universal」「United」
消費者のニーズが多様化し、その変化のスピードが速くなっている事業環境において、タイムリーかつスピーディーに独自性の高い新商品・新サービスを提供する難易度は年々高くなっています。「絶対価値で世界唯一となり、相対価値でも2030年までに世界一となる」ことを達成するには、事業展開と社員の成長の双方でスピードをさらに一段上げる必要があります。このような課題認識に基づいて、2025年度は社内に向けて、「Unique(ユニーク、独自性)」「Universal (ユニバーサル、世界中、だれでも)」「United(ユナイテッド、結合)」という3つのキーワードを発信しました。
特に「Unique」は重要で、他社と比較されない、比較できないレベルの独自性をすべての事業活動において目指さなければならないと思います。また、「Universal」は、当社が「世界に通用する」といった意味合いはもちろん、「世界中で愛される」レベルへと引き上げます。その一環として2025年1月には、ケニアをはじめ東アフリカの数ヵ国で、現地ニーズを満たす生理用ナプキンの販売を開始しました。
最後に「United」は、文字通り全社一丸となって、共通の目標に向かって取り組むことです。ユニ・チャームの全社員が自身の可能性を信じ、「共振の経営」の実践を通じて、それぞれの能力を遺憾なく発揮することで世界一を必ず達成します。
2025年6月
ユニ・チャーム株式会社
代表取締役 社長執行役員
高原 豪久