2019年04月10日
平面の紙を立体的に表現する「折紙工学」に着目
折紙技術をベビー用 紙おむつの吸収体に応用
明治大学 萩原特任教授らと共同で開発
ユニ・チャーム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 : 高原豪久)は、明治大学 研究・知財戦略機構の萩原一郎 特任教授らと共同で、「折紙工学」を応用してフィットを高めたベビー用 紙おむつの研究を行いました。
その結果、赤ちゃんのからだに合わせて変形する吸収体を開発しました。今回は、開発結果の一部をご報告します。
研究の背景
低月齢期特有の「ゆるうんち」は、紙おむつのすきまやズレによって、モレが多く発生しています。こうしたモレを低減するため、付け方を工夫されていますが、人によってモレ率が変化する実態がありました。
そこで当社はこの度、新たな着眼点として、明治大学 研究・知財戦略機構の萩原特任教授らが研究する「折紙工学」に着目し、赤ちゃんのからだに合わせた紙おむつの形状に焦点をあてて、研究・開発をしました。
研究の方法
① 赤ちゃんのドールを用いて、胴回りと股間周辺を3Dスキャンし、立体データへ変換しました。
② この立体データをパーツに展開して、2次元化しました。
・展開したパーツから、特に「複数のパーツで構成される股間部分」に注力し分析しました。
研究の結果
③ 股間部分に集合する複数のパーツを組み合わせ、成型しました。
その結果より、
・股間部分に「身体の内側に向かって(複雑な)凸形状が密集」していることを発見しました。
・お腹側に「1つの凸状の頂点ができる」ことを発見しました。
折紙工学による研究の結果を製品化するための考察
赤ちゃんの股間幅は大人に比べて非常に狭く、股間部の中央部はサイド部よりも身体の内側に向かって凸状に盛り上がっていることが確認できました。また、お腹側には各山折り線が集まり身体の外側に向かって1つの頂点が現れることが確認できました。
この研究結果から、厚みのある吸収体を自由自在に変形可能なものにするためには、厚み調整やスリット、エンボスなどによって、狭い股間でも可変可能な領域を持つ“変形してコントロール可能な吸収体の工夫”が必要と考えられます。
今回の研究結果を活かし、誰が装着してもからだにフィットして、しっかり漏らさずキャッチできる紙おむつの開発につなげていきます。
明治大学 研究・知財戦略機構 萩原特任教授のコメント
上記の日本発の折紙工学①~③の図に示すように、
① 見たものを折り紙にする折紙設計
② 折紙構造の軽くて強いという特徴を活かした設計・製造
③ 同じく展開収縮できることを活かした設計・製造
の3分野で活発な研究開発がなされています。
今回の成果は、①のものです。我々が構築した世界初の折紙設計システム※を使用し、足を伸ばした時、座った時の二つの状態の赤ちゃんのドールの写真画像から得られる3次元データをもとに、前部、後部、脚部、下部と4つに構造分離された股間部の展開図を得ました。これらの展開図からおむつを構築する中で固定部分と曲げられる部分の基本構造を明確にすることができました。この基本構造を元にユニ・チャーム(株)の開発担当者が、股間部分に集合する複数のパーツの組み合わせ方などを工夫し、赤ちゃんが座った時も足を伸ばした時も身体にフィットする画期的な紙おむつが発売されることを期待しています。
- 萩原一郎氏、他3名、三次元構造物の製造方法、三次元構造物の製造装置、及び、プログラム、特許第6198107号(2017年9月1日登録)
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