おねしょ対策

良い睡眠はとても大切

睡眠はおねしょだけでなく、子どもの発達に大切なこと

おねしょ対策に「早寝早起きの実践」があります。早寝早起きは規則正しい生活リズムをつけるだけでなく、睡眠の質を高めるために大切なことです。

特に子どもにとって睡眠は大人以上に重要な意味があります。

大人にとって睡眠は「休息」を得るためのものですが、子どもにとっては休息だけでなく「発達」という大事な目的があります。体の発達だけでなく、「脳の神経回路をつくり、脳の働きを発達させ、処理する能力を高める」ためのものでもあるのです。

良い眠りのためには、睡眠時間、睡眠の質、睡眠リズムのすべてが整っている必要があります。これらのいずれか、またはすべてが欠けてしまうと睡眠障害につながり、おねしょだけでなく、情緒不安定や食欲不振などの症状を引き起こす原因となってしまいます。

健康な睡眠とは?

子どもは大人に比べて布団に入るとすぐ眠りますよね。これは健康な証拠。健康な子どもの睡眠とは、一般的に下記の状態です。

  1. 布団に入ってから眠りに落ちるまでの時間が短く寝つきがよいです。2~5歳では平均13分、5歳~12歳で平均16分で、成人(20~50歳)の平均32分と比べてもとても短いことがわかります。
  2. 新生児の赤ちゃんの頃は、1日の睡眠時間が16~18時間ととても長かったのが、少しずつ起きている時間が長くなっていきます。
    子どもが必要な睡眠時間は生後6ヶ月頃~2歳で13時間。この時期に早寝早起きと、しっかり睡眠時間をとる習慣をつけましょう。5歳で11時間必要ですから、夜8時までにはお布団に入ることを目標としたいです。10歳頃で必要な睡眠時間は9時間程度です。
  3. 深い睡眠の割合は、2~5歳で平均15%、5歳から1歳で平均21%で、成人の50歳では平均2%ですから、いかに子どもが深い眠りが多いかわかります。
  4. 途中で起きることはほとんどありません。

レム睡眠とノンレム睡眠

睡眠の段階は大きく分けてレム睡眠とノンレム睡眠の2つがあります。レム睡眠は睡眠中でも目がクリクリと動いて脳が活動している浅い眠りの状態、ノンレム睡眠は目の動きがなく脳が休息している深い眠りの状態です。人は眠っているときに、レム睡眠とノンレム睡眠のセットを一晩の間に繰り返していますが、それぞれに大切な役割をもっています。

レム睡眠中には脳の神経回路が生成されており、子どもは大人よりもレム睡眠の割合が多い特徴があります。

また、寝ついてから最初に訪れるノンレム睡眠中には成長ホルモンが大量に分泌されていて、子どもの体の組織と脳の成長を促しています。

このように子どもにとって睡眠は成長や発達にとても重要な営みなので、睡眠時間をしっかり確保することが大切なのです。

睡眠とおねしょの関係

おねしょの卒業には「抗利尿ホルモン」という、おしっこの濃度を濃くして量を減らすホルモンが関係していると前述しました。抗利尿ホルモンは夜間にたくさん分泌されますが、分泌を促すためには、睡眠のリズムが関係しています。

人間に限らず動物には時計遺伝子というものが備わっていて、夜になると眠って朝になると起きるようにできています。規則正しい睡眠や生活のリズムを保つことで抗利尿ホルモンが十分に分泌されると考えられています。そのため、毎日同じ時間に寝て起きるリズムをつくることは、おねしょ改善のためにも大事なことです。

良い睡眠をするには?

おねしょにも影響を与える睡眠の質を高めるために、おうちでできることにはどんなことがあるのでしょう?

1)太陽の光を浴びる日中の活動を増やしましょう
良い眠りには、外遊びや散歩など、朝日や日光を浴びるようにすることが大切です。
朝起きたときは、最低10分程度、日差しが顔や身体にあたるように窓際で過ごさせてあげてください。
2)布団に入るのは子どもが眠くなってから
5歳頃までは午後8時に寝かせるのが理想ですが、全然眠くないのに「8時なったら必ず布団に入る」と決めつけたり、「朝が早いから夕食後に時間をあけずに布団に入れる」ことは寝つきが悪くなることにつながります。
同じ時間に寝させたいけれど、子どもが眠くなさそうな時は、静かで、やや暗い環境で、ソファーやクッションの上で過ごすなどの工夫をするとよいでしょう。
3)夕食は早く、お風呂は熱すぎないように
おねしょ対策と同様に、良い睡眠のためにも就寝3時間前までには夕食を終わらせたいです。また、夕食後のおやつや夜食は成長ホルモンの分泌を悪化させるので食べない習慣をつくりましょう。
お風呂はぬるめのお湯で、就寝の2時間前までに入って、体温が徐々に下がった状態で布団に入るように心がけてください。
4)毎朝同じ時間に起こしましょう
前日に遅く寝てしまった場合でも、翌朝はいつもと同じ時間に起こしましょう。睡眠時間を確保しようと朝遅く起こすと、その分夜の眠気が訪れるのも遅くなるので、睡眠のリズムが不安定になっていきます。
日中子どもが眠そうになったら、外に連れ出したり、子どもの興味のある作業を一緒に行ったりして、夜まで寝ないように頑張ってください。
5)朝食を食べましょう
体内時計を適切に保つためには、決まった時間に食事を取ることが大切です。特に朝食は体内時計の安定と活性化に重要な役割を担っています。眠っていた時に下がっていた深部体温を上げる役割もはたすので、少しでもエネルギーになるものを摂取させて下さい。
6)就寝前の同じ行動(ルーチンワーク)を作りましょう
人は同じ行動をとると、気分が安定して心がやすらぎます。そのためには、就寝前には平日も週末も同じ行動(ルーチンワーク)をしましょう。
例えば、幼児には夕食後「お風呂」「歯磨き」「トイレ」「読み聞かせ」「お休みの歌」などを毎日繰り返します。具体的な就寝の準備をすることで、少しずつ「そろそろ寝るんだな~」と心の準備を促して、日中の起きている状態から眠りの状態に切り替わっていくようになります。
7)布団に入ったら楽しい出来事、良かったことを考えましょう
布団に入ってから心配事や不安なこと、また日中の悪い出来事を思い出したり、考えたりすると眠りの質を悪くします。
寝る前に、日中に良かったこと、楽しかったこと、嬉しかったことを子どもと一緒に見つけ出して、それについて少しお話ししてみましょう。ささいなことでも、ママの方から「今日これできたねー」とほめてあげるのでも効果的です。ちょっとした嬉しいこと、きれいだったことなどを思い出しながら入眠すると睡眠の質は確実に向上します。
寝る前に子どもをしかったり否定的なことは決して言わないように。
8)寝る1時間前にはテレビ、ネット動画、スマホを止めましょう。
テレビや動画は脳の視覚中枢を刺激し、寝ついてもしばらく活動を止めません。また、スマホやPCなどのブルーライトは同じく視覚中枢や前頭葉を活性化してしまいます。
動画、スマホは寝る1時間前にはやめて、寝室には持ち込まないようにしましょう。

監修:

昭和大学医学部小児科学講座 教授

池田裕一先生